2021年度(一社)白老青年会議所スローガン

根本から考え 思い切っていこう

はじめに

Go where nobody has gone,
Do what nobody has done.
(誰も行ったことのないところへ行き、誰もしたことのないことをする。)

 目の前にある世界をすぐに変えることはできなくても、自分自身の心は変えていくことができます。そして、心が変わった瞬間から、意識が変わり、行動が変革し、やがては世界を変えることができると私は確信しています。さらには、明るい豊かな社会の実現は、一時の成功の積み重ねではなく、全ての人の成長によってもたらされることを確信しています。

  議論や対話は、言葉の明確な定義を相手と共有することで、はじめて進行します。そして、組織はその目的や理念を仲間や関わっていただく方々と共有することで、はじめて機能します。

2021年度 理事長
笠井 雄太郎

現在地について

 戦後から平成を迎えるまでの日本は、人口増加を背景に、他国の技術を取り入れ改善を加えることで生産性を高めるキャッチアップモデルを確立し、GDP世界2位にまで登り詰め、経済大国と呼ばれるようになりました。しかし、家事や育児を女性に頼り切り、男性主導の長時間労働を強く推進してきた結果、国民一人当たりの生産性は他国に抜かれ、女性の社会進出においても世界と大きな差をつけられています。
 製造業は、間違いなく日本の宝であり、これからも必要不可欠なものですが、製造業のGDPにおける割合は4分の1を切っています。今後の日本の更なる発展は、第4次産業革命に代表される技術革新を取り入れることで実現する3次産業の更なる成長にかかっているといっても過言ではありません。
 高齢化が進む日本では、国家予算ベースで5千億円の支出が毎年増えていくため、現状維持は後退を意味します。これからの日本、そして地域社会の発展には、常に学び新たな挑戦をしていくことが求められ、次代を担う子ども達に対して、その姿勢を示し続ける必要があります。

問題と課題を分けよう

 人口減少、超高齢社会、これらの言葉は、これまでに使い古されてきた決まり文句のように、私たちが世の中を見渡したときに必ず現れます。しかし、そもそも問題だと見受けられがちな言葉の羅列は、私たちが取り組まなければいけない課題そのものでしょうか。問題とは、このままではいけないという関心の範囲のお題であり、私たちが実際に取り組まなければいけない目の前の障壁である課題とは違います。
 人口の動態を日本が経済成長を続けていた時代と同じ状態にするには、出産に対する充実した給付や待機児童問題を無くす保育施設の完備など、シンプルながらも徹底した政策の実行や、アメリカの人口増加の要因でもある移民の受け入れを行う他ありません。
 超高齢社会とは、本来は人間がこれまで夢見てきた不老長寿の実現の第一歩です。問題となる唯一の点は、健康寿命と平均寿命の差だけです。これは、老若男女関係なく社会に対する取り組みを行うことができる人全員で、社会における弱者を支える仕組みに変えることができれば何も怖いものはありません。
 しかしながら、これらの問題は、国民一人ひとりの関心を高めてもすぐに解決することは難しいものです。今、私たちがしなければならないことは、大きな問題への関心は捨てずに問題と課題とを明確に分け、社会をより良くするために自分にできることは何かを自分で考えて、自らが導き出した結論に向かって取り組むことです。

どんな時でも必要となるもの

 答えのない時代と呼ばれる近年は、AIをはじめとするテクノロジーの発達が顕著であり、様々な業種でイノベーションが起きることで、これまでにないサービスが次々と生み出されてきました。AIで仕事が奪われる、という話も多々ありますが、テクノロジーはあくまで道具です。すぐに手に入れられるものは、すぐに陳腐化します。イノベーションとは、あたかも誰も考えついたことのない、無から有を生み出す魔法のような扱いをされることがありますが、ドイツの哲学者であるヘーゲルの唱えた事物の螺旋的発展の法則のように、古く懐かしいものが、新たな技術を取り入れて進化していくさまであり、異なる既存の知識を組み合わせた結果として起こる革新です。これを実現していくには、常に学ぶことを止めず、考える力を培い続ける必要があります。

青年会議所とは

 私が青年会議所を一言で説明するならば、「社会貢献を手段とする学びの場」です。誰かの役に立って、しかも自分の成長の機会になる、こんなにいいことはありません。自分の仕事に関係ある勉強だけではなく、仕事には直接の影響がない社会貢献を手段として学び見識を広げることで、人生を豊かにするために必要充分な考える力を培うことができます。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業生へ向けたスピーチにおいて語った「Connecting the dots」のように、自分が魅了された分野への真剣な学びや取り組み、そして、それらがもたらす出会いは、それが直近で活用できなかったとしても必ず後々繋がり、自らの人生を飛躍させる大きな糧となります。人は、たくさんの人に出会い多様な考え方に触れ、本をはじめとするたくさんの知識を吸収し、行ったことない様々な場所に赴くことで成長します。社会貢献をするためには、多くの人と会って議論や対話を重ねて見識を深めたり、公開されている情報について本やインターネットを通して調査を重ねて事実を検証したり、調査や発表、実行のためにあらゆる場所へ赴いたりしなければなりません。まさに青年会議所とは、私たちを大きく成長させてくれる「人・本・旅」への扉なのです。扉は、自らの手で掴んで開かなければなりません。そこには、行ったことのない場所へと続く扉を開く心構えと、あらゆるチャンスを掴み取る握力が必要です。

まちづくりとは

 「まちづくり」という言葉を様々な文献で調べると、「さらに良い生活が送れるように、ハードとソフトの両面から改善を図ろうとするプロセス」、「建物や道路といったハード面や、歴史文化などのソフト面を、保護と改善する事によって、さらに住みやすいまちとする活動全般」、といった表現で要約されています。「社会貢献を手段とする学びの場」に身を置く私たちにとっては、社会開発というテーマから課題を見つける訓練、世間という大きな書物から学ぶ機会ではないでしょうか。
 白老町における、公共施設や社会インフラなどのハード面における課題は数多くありますが、それについては行政の方々がすでに問題を把握しており、総合計画をはじめとする数々の施策を打ち出し日々改善に取り組まれています。能動的な市民である私たちに求められるのは、困っている人々の声を集めて行政に届けることと、子どもたちへの教育や大人たちの生涯学習に対する支援をはじめとする、ソフト面における課題解決です。  
 さらに住みよいまちを目指す運動である「まちづくり」を実現するためには、そこに住み暮らす人々が多様な経験を積み様々な考えに触れることで、見識を広げる必要があります。学びの機会や文化と芸術に触れる機会を充実させ、地域に住み暮らす人々の終生の学びを促進するとともに、考える力を培い続けることが可能な社会開発を行うことで、学びによる豊かなまちの創造を実現します。

ひとづくりとは

 青年会議所において、「ひとづくり」は指導力開発(Leadership Development)と紐付けられ、リーダー層やマネジメント層の能力開発として数多くの人財を社会へ輩出してきた経緯があります。私は「ひとづくり」について、「人・本・旅」による学びを通して物事を考える力を培う機会の提供のことであると考えています。そして、学びは、人生を豊かに、自らの生き方の選択肢をより豊富に提供してくれるものであると確信しています。
 感染症や災害などの自然現象によって人々の往来が一時制限されても、世界が分断されることは決してなく、グローバル化は更に進み続けます。日本では産業構造が変化し、さらには異なる価値観をもつ人々が人口に占める割合は増加を続けています。このような状況下で既成概念や固定観念に縛られたままでは、より良い人生を送り、豊かな社会を実現していくことは不可能であると考えます。
 人間の脳は、生活の主な手段を狩猟採集から農耕畜産へと切り替えた1万数千年前から殆ど進化していないと言われています。このことから、これまでの人々が行ってきた物事への判断の蓄積である歴史や、考え方についての学問である哲学について学び見識を深めることで、既成概念や固定概念を振り払う勇気を培うとともに私たちの目の前に横たわる社会常識や一般常識を疑う目を養う必要があります。そうすることで、変化の激しさと速度を増すこれからの時代においても、強く生き抜くことができる人財の育成が可能となります。そして、地域を牽引し発展させる役目をもつ私たちには、周囲の人々に対して、誰よりも学び誰よりも自由に楽しく過ごしている姿を示し続ける責務があります。

会員拡大について

 人の成長と同じように組織の成長にも、多様な考えをすり合わせることが必要です。さらには、豊かな社会の実現は、人々の成長によってもたらされることから、「社会貢献を手段とする学びの場」である青年会議所に係わる仲間を、より多く迎え入れなければなりません。性別に分け隔てなく、職業や役職に拘わらず、様々な人々と共に青年の運動を展開する必要があります。多様性ある組織の確立こそが、明るい豊かな社会の実現の第一歩である、と考えています。

おわりに

 私が青年会議所に入会した理由は簡単で、それは、自身の社業において取引をいただいている方々からのお誘いがあったからです。入会時点では、この所信に書き連ねた考えや思いは少しもありませんでした。しかしながら、入会してから月日が経ち経験を重ねるごとに、ほんの少しずつではありますが、私にもまちの未来への憂いや自分の頭で考える力が醸成されてきました。目の前の物事から逃げ出し、たくさんの方々に対して迷惑をかけたにも関わらず、それでも手を差し伸べてくれる素晴らしい仲間がいるのがこの青年会議所です。それまでの私は、自らの力を過信し、一人で何事にも取り組もうとしていました。ひと一人の取り組みから得られる結果は、仲間と共に行う取り組みから得られる結果に比べて極めて限られたものとなってしまいます。事を成したいときに一人の人間に求められるのは、圧倒的な能力ではなく、圧倒的な熱意であることを青年会議所で学びました。熱は、空間や物質を介して伝導します。熱意は、文章や音声、そして人を介して伝播します。青年のもつ高い志や熱意が、まちの人々へと伝わり、輝かしい未来へこのまちを導くことを心の底から確信しています。物事への取り組みについて、アフリカで生まれた以下のような諺(ことわざ)があります。

 早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め。

 皆さんで一緒に、もっと遠くへ、明るい豊かな未来に行きましょう。

基本理念

学びによる豊かなまちの創造

基本方針

1. 考える力の鍛錬を基軸とした会員の能力開発
2. 学びの機会の充実による社会開発
3. 学びを愛するリーダーの育成
4. 多様性ある組織の確立